「何かとあったほうが俺も便利だから。持っていてほしんだ」
私たちがついたのは携帯電話のショップだった。
「でも・・・」
「これから仕事をするのにも必要だし。持っていてくれると安心だから」
今まで恭と一緒にいるときは必要なかった。

そもそも携帯メールで連絡をするほど話をすることもなかったし、お互いに干渉もしていなかった。
家に電話があり、働いていても不便はしなかった。

「・・・」
私が黙っているうちにも嶺は契約を進めていく。

「ここに契約者様のお名前をご記入ください。」
そう言われて私が紙に自分の名前を記入すると、ふと隣から声がした。
「鈴の字だ・・・」
「え?」
「いや。鈴てかなり字がきれいでさ。鈴ていう漢字の最後の直線を長くまっすぐに書くの・・・。昔と一緒だ。」
そう言われて私は自分の書いた文字を見た。