「記憶のない鈴が生活しやすいように、鈴はここを使って俺は客間を使ったり、いくらだってなんだってする。」
言葉に嶺の熱い想いがこもっている。

「だから・・・ここでもう一度一緒に暮らさないか?家事も俺頑張るし、天井の掃除だっていくらだってする。」
「・・・」
「もう・・・離れたくないんだよ・・・失いたくない・・・鈴を・・・」

いつまでも嶺が恭の家にいることができないと私もわかっている。

私だってそうだ。

いつまでも恭に甘えているわけにはいかない。

失ったままの過去と向き合う努力もしないで、未来は手に入らない・・・前に進めない・・・。

「少しだけ・・・」
「ん?」
「もう少しだけ時間が欲しい・・・」
その言葉に嶺は頷いてくれた。