「・・・?」
自分の口から出た言葉なのに、自分自身でもその言葉の意味が分からない。

「鈴がよく俺に言ってたんだ。こうやって俺がわがまま言うと大型犬みたいだって。」
嶺が私の失っている記憶をくれる。

「確かに・・・大型犬みたい・・・」
無邪気な笑い方も、駄々っ子のようなしぐさも。
「ははっ。いい年して恥ずかしいな。」
嶺はそう言って笑った後、急に私の方へ距離を詰めて来た。
真剣な顔で私の顔を覗き込むように高い身長をかがめる。

「ここにいたら、俺といたら記憶が戻るかもしれない・・・。なぁ鈴、戻ってこないか?」
「・・・」
その提案に私が目をそらす。
それでも嶺はひかない。
「記憶を取り戻すのが怖かったら俺が怖くないようにそばにいる。守る。どんな過去も俺が一緒に背負う。」
「・・・」