「ごめん・・・」
しばらくして、ピアノが夕日に照らされるころ、嶺は私から体を離した。

「そろそろ帰らないとな。長谷部さんが心配する。」
そう言って嶺が私を見る。

私は曖昧に微笑んだ。

「ほかの部屋、見るか?」
嶺は私をほかの部屋にも案内してくれていた。

家の中はかなり整頓されている。
「鈴がだらしなくてすぐに汚す俺が汚せない構造にしてくれたんだ。この部屋は。」
ぎこちなく流れていた空気を変えるように嶺が微笑む。
「床になんでも置いて積み上げる俺が床に置かないように、置く場所も決められててさ、最終的に片付ける場所じゃなくて、一時的に物を置く場所も決められてたんだ。もしもそれを破ると」
言葉を止める嶺に、私が顔を覗き込む。
「破ると?」
もしかしたら私は嶺に手をあげたりするような乱暴者だったかもしれないと少し不安になる。