慌てて お化粧をして。

麻衣に笑われて。

私は 駅までの道を急いだ。


今までと 違う気持ちで 香山さんに会える。

私の胸に 詰まっていた物は もうないから。
 


待ち合わせは ホームの一番端。


香山さんが 電車から下りて来た時。

自分でも信じられないけど。

私は 香山さんの胸に 抱き付いた。
 

「ユズ、おはよう。」

戸惑うこともなく 香山さんは 私を抱き締める。

背中を包んでいた手は 優しく動いて。

私の髪を撫でる。
 

「リュウ。お待たせ。」

そっと顔を上げて 香山さんを見る。
 
「うん。待っていたよ。ユズ。」

香山さんは 私の顔を 胸に押し付ける。


その時 香山さんの気持ちを 私は理解してしまう。

これ以上 顔を見たら キスしてしまう。



私も同じ気持ちだったから。