麻衣が言うように 私は ただの『都合の良い女』だった。
 

浩太と付き合っていた一年。

数えるほどしか 会ってないのに。

見えない何かで 縛られていて。


私は 自分を擦り減らしていた。

どんどん 自分を嫌いになって。

自分に 自信をなくしていった。
 


香山さんが言ったように 私は 寂しい顔をしていたと思う。


愛されている実感がないまま 精神的に 追い詰められて。

私には その程度しか 価値がないと思っていたから。


それなのに 浩太と別れることが できなかったから。
 


でも、やっと踏み出せた。

香山さんを知ったことで 私は前を向けた。


もう大丈夫。


高校生の頃のような 怖いもの知らずの 元気な私に戻れる。


もう諦めないし、流されない。


吊り革につかまって 外を見ながら 私の胸は 久しぶりの希望に震えていた。


この感動を忘れない。

ずっと。


麻衣に会ったら 話そうと思いながら じっと外を見ていた。