麻衣の作戦は 見事に成功した。


後で 麻衣に 何かをご馳走しよう。



私が黙って そんなことを考えていると
 

「いつ田舎に帰るの。それまでは まだ恋人だよね。」

と浩太は 顔を上げて言った。


もしかして今夜 私を抱くつもり?

私は 鳥肌が立つような 寒気を感じた。
 

「今、アパートに 母が来ているから。部屋を 引き払う準備があって。母は 当分こっちにいるわ。私 もう 辞表も出したし。仕事の引継ぎが 終わり次第 実家に戻るから。」

これも 麻衣が考えた嘘。
 

「そんなにすぐ?」

浩太は がっかりした声で言う。
 
「私、もう27才よ。急ぐに決まっているでしょう。」

私は強く言う。
 

「だから 私達 今日でお別れよ。」

私は 浩太をじっと見て言う。
 
「そうか。仕方ないな。元気で頑張れよ。」


浩太は 逃げるような顔で言った。