立ち止って 私を 抱き締める香山さん。


自分から 誰かに 抱き付くなんて 初めてだった。



でも 抑えることが できなかった。



しばらく 私を 抱き締めていた香山さん。



そっと 胸から 私を離すと 何もなかったように 肩を抱いて 歩き出す。
 

「ユズ。」

香山さんは 甘く 私の名を 呼び捨てにする。
 
「リュウ。」

私も 衝動的に 香山さんの名を 呼んでしまう。
 


「可愛いな。ユズ。遠回りして 帰ろうね。」


香山さんは 私を抱く腕に 力を込めて言う。




そして、私のアパートと 反対の方向へ曲がった。