「彼氏、いるの?」

香山さんから 聞いてくれた。

私は 小さく頷く。


「でも、うまくいってなくて。はっきりしないと いけないって思っていて。ただ きちんとするまでは 香山さんと 付き合えない。」

私は 正直に言ってしまう。


言わなくても 香山さんは 気付かないかもしれない。

どうせ 浩太とは 滅多に会わないのだから。


香山さんと 付き合いながら 浩太と 別れればいい。
 


「ユズちゃん 正直だね。黙っていれば わからないのに。」

まるで 心を読んだような 香山さんの言葉に
 

「無理です。二股とか。多分 私 ボロボロになってしまう。」

私は 激しく首を振る。
 

「待っていてもいい?」

香山さんは 今までで 一番優しい目で 私を見た。
 
「待っていてくれますか。」

私は 胸が熱くなり 声が震えてしまう。

鼻の奥が痛くなり 涙が溢れる。


涙って こんなに 自然に溢れることを 私は初めて知った。