いつも思っていた。

無理やり 連れ出してほしい。


『今すぐ来いよ』

と呼び出して 振り回してほしい。


『帰るな』

と引き留めてほしい。


でも そういう恋を したことがない。



「本当?よかった。」

香山さんは ホッとした顔をする。

そして
 

「ねえ。行きたい所、ある?」

と私に 聞いてくれる。
 

「うーん。雨 降りそうだから。外じゃなければ。」

私が 漠然とした 希望だけ言うと 香山さんは 少し考えて
 


「まず、渋谷に行こうか。」


と言った。