「あっ。」

お惣菜を 見ていると 隣にいた男性が 私を見て 声を上げた。


私は 顔を上げる。
 

「あっ。加山雄三。」

驚いた私は 彼の名前を 呼び捨てに してしまう。


『カヤマさん』は ケラケラ笑って
 
「名前 覚えてくれたんですね。でもおしいな。俺、リュウゾウなんです。香山隆三。」

と明るく 言ってくれた。
 

「ごめんなさい。私。すごく 失礼なこと言って。」

私は 慌てて 頭を下げる。
 

「いいえ。嬉しいですよ。覚えていてもらえて。内藤さんですよね。」

スーツ姿の香山さん。

歯医者さんで 会う時よりも、落ち着いて見える。