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『『いただきます』』



まだ、あの冷たい家で誰かの声が優子の声に重なっていた頃。



『うわぁ~、ハンバーグ?』


『そうだよ。優子が好きだから頑張ってみた』


『ん! 美味しい! ――、すごいね! コックさんみたい!』


『あははっ、ありがとう。ほら、あんまり一気に掻き込まないんだよ。誰も取らないんだから』


『んむ……? ――、おかわり!』


『ふふっ、はいはい』



そのハンバーグは、本当に美味しかった。

形も歪(いびつ)なのに。味付けもトマトケチャップとウスターソースという簡単なものなのに。それでもそれまで食べた料理の中で一番美味しいと優子は――に言った。

それを聞いた――は優しく笑いながら、涙の跡の残る優子の小さな顔をそっと包み込んだのだった。



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「……も買ったから……あ、レイは味付けは何がいい?」



前を歩くユウが振り返って聞く。



「……」



目の前に、トマトケチャップのパッケージが並んでいた。



「レイ? 何がいい?」



彼はその向こうで呼んでいる。



「……デミグラスソース!」



私は少し大きな声でユウに届くように言って、彼の元に駆け寄った。