久し振りの温かいご飯はすぐに食べ終わってしまった。誰かと共に食事をするなんて、学校での昼食の時間を除けば本当に久し振りだった。
ユウとの会話は楽しい。互いに口数は多くないが、その沈黙を居心地悪くは感じない。特に共通の趣味や共通の話題があるわけでもないのに、程よいテンポの会話のキャッチボールは止まることはなかった。
私とユウは後片付けを始めた。その時間さえも楽しかった。
食器を洗い終わってシンクの台の上に並べた時、玄関のドアが開く音がする。
「ヤバ……!」
その音に自然と敏感に反応するようになってしまっていて、私の足はもうすでに自室へと向かおうとしている。
「ユウ、こっち来て!」
私は慌てて彼の手を引っ張った。
彼は「へ?」と間の抜けた声を上げながら私に引っ張られている。
そして、私は彼を自分の部屋に連れ込み、鍵をかけた。
帰って来たのは恐らく兄だ。ユウを、見られたく無かった。
玄関の靴は念のため隠しておいたし、いつもと違うのは1つ言うならシンクの水切りかごに食器が並んでいるくらいだ。抜け目ない兄ならきっと気付くだろうが、それでどうなるかは私にも分からない。
「やだ、レイ……積極的……!」
こっちは今にも冷や汗が出そうだというのに、ユウは体をくねくねさせながらそんなことを言う。
何だが力が抜ける。
「何言ってんの……」
「もうー、照れないでよお」
彼は謎のおネエ口調でガバッと抱きついてくる。
「ちょっ、やめてよ」
本気で押し返さない私に、彼は更に腕の力を強めた。
「ユウってば……」
私の声なんかお構いなしに彼は私の首筋に顔を埋め、唇を当てる。
「ちょっと」
思わず振り返ると彼はニコッと笑った。
やられた、と思った時には彼が顔を近付けてきていた。

