「何でもない」
足を椅子の上に乗せ、膝に顔を埋める。
その体勢が一番安心するから。
「何でもなくないだろ。どうしたんだよ」
「……」
ここに居たら駄目だ。
暗い日に、酷い病人。状況が悪すぎる。
「……ユウ……」
「ん?」
駄目だ。ここで彼に頼ると、もう一人で居られなくなる気がする。
そう、分かっているのに。
「レイ。こっちおいで」
腕を広げてくれる彼の胸に、飛び込んでしまう。
ソファーに座る彼の隣に座ると、彼は黙って私に腕を回した。 そのまま頭を撫でてくれる。
どうしてユウは私がして欲しいことが分かるのだろう。
私は何も聞かないユウの優しさにつけ込んで、彼の肩に顔を乗せた。
しばらくすると浅くしか吸えなかった息が落ち着いてきて、鼓動も普段通りの速さになる。
「落ち着いた?」
「ん……」
それでも離れたくなくて、彼の背中に腕を回したままでいると彼が笑った。
「今日は随分と可愛いね? どうしちゃったの」
「……るさい」
今日は酷く曇っていたから、少し不安定になっただけだ。
ただそれだけ。その他に理由なんて無い――。

