「……こ……ゆ、う、こ! おいっ!」



――パンッ!



「えっ? な、何?」



目の前で手を叩かれてハッと我に返ると美穂と夏川が私の顔を覗き込んでいた。



「どうした橘、ぼーっとして」


「え? そんなしてた?」


「もうー、帰るよ!」



頷く夏川の横で、美穂が呆れたように言う。



「えっ……あれ? 授業終わった!?」



いつの間にか放課後になっていたらしい。



「……はぁー」



美穂は溜め息をついて私の鞄をほい、と渡す。



「うん、帰るか」



私は立ち上がった。

ドアに向かって歩いていくその後ろで美穂と夏川が話している内容は勿論私には聞こえない。



「な、橘どうしたの?」


「あぁー……なんか曇りの日はあんな感じになるんだよね」


「そう言えば今日は急に曇ってきたなあ。……でも、曇りの日なんて結構あるよな? その度にああなんのか?」


「うん。あ、でも酷いのは今日みたいな、いつ降りだすか分かんないくらい暗ーい感じの日」


「へー……」







「優子! 夏川! バイバイ! またね~」


「ん」


「おう。じゃあな」



そうやって駅で美穂と夏川と別れた後、私は何故か見知らぬ女性の介抱をしていた。



「あのー……大丈夫ですか?」