「それは……男の急所を思いっきり蹴って……」
「グフッ……ゲホッ、ゲホッ……」
そう言った瞬間、ご飯を掻き込んでいた夏川がむせる。
「ちょっとー、夏川何してんのよ」
美穂が呆れたように夏川に声をかける。
「悪い、不意討ち過ぎて」
「てかさ、今1番ホットな噂の真相は?」
「1番ホットって?」
「だーかーらー、優子と、夏川! デキてんのかって」
「ああ……」
これはどこまで話して良いのかと詰まった時、夏川が口を開く。
「あ、俺ゲイだから。それは無いわ」
「なーんだ、そうなんだ」
ちょっとワクワクして損したー、とコンビニのおにぎりにパクつく美穂を、夏川は心底驚いたように見ている。
「ははっ、すげえな」
「何が?」
「いや。お前らって最高だよ」
「そ? それは良かった」
私はそこでサンドイッチを食べ終え、水道に向かう。
手を洗ってうがいをし、踊り場に戻っていくと。
「何の用だよ」
夏川の威圧的な声が聞こえてきた。
ん? 誰に言ってるんだろ?
そっと覗くと、男子生徒の後ろ姿が目に入る。
あれは……。
「あれ、もう新しい彼女? お前女いけたんかよ」
手塚だ。