「えっ、何それ偽名?」
「そ。お前は? 何て呼べば良い?」
「じゃあ……レイで」
「は? 偽名かよ」
「そりゃそうでしょ。あんたが偽名なのに何で私が本名言わなきゃいけないの」
「確かに」
「でしょ」
フッと笑った顔が、なんだか少し投げやりっぽいだなんて言ったらどんな反応をするだろうか。
「高校生でしょ、レイ。どこ? 何年?」
私の制服の襟元に着いた校章を人差し指でくるくると回すユウ。
いちいち距離感近いよなあ、この人。
「1年。都立だよ。多分知らないよ」
「そっかー……」
「ユウは、何歳? 何してる人?」
「21、大学生やってる」
「へー」
「へーって。会話続かせてよ」
そう言ってからユウはコーヒーに口をつけた。
「えー、声掛けてきたのはそっちなんだからユウが繋げてよ」
「それもそうか。んー……レイはあの中行かないの?」
ユウが指差す先は吐きそうになるほどの人混み。店が3階のために上から見下ろす形になる。
「え、やだあんな人多いの」
もう空が光を手放したその夜の街は、狂ったような素人の曲芸師に溢れていた。

