振り返ると。



「ああ、言っとくけどあれ合意の上だからな。勘違いすんなよ」


「何で……」



何で、あんたが。



「あ? 俺がどこで何してても関係無いだろうが」



それはそうだけどさ。



「お前こんな時間に出歩いて何してんだよ?」


「別に、関係無いでしょ……」


「ははっ、そうだな」



目の前の彼は歪んだ笑顔を作る。



「……ああ。それとも何、もう新しい男?」



彼が一瞬、目線だけを私の後ろに逸らして言った。

私も振り返ってみると、そこには買い物が終わったらしいユウが居る。



「レイ」



ユウが私を呼ぶのと同時に、彼は少し背中を丸め、耳元で私にしか聞こえないように低く言った。



「……随分と淫乱になっちまったな」


「っ……!」



彼はそのままその路地の奥へ歩いて行く。
私は彼の後ろ姿を目で追うしかない。



「レイ? ……おい、レイ! どうした?」



目の前で手をパンッと叩かれる。



「え? ……ああ、何でもない」


「――さっきの人知り合いか?」


「京一(きょういち)。…………兄貴だよ」


「……そっか」



私達はどちらからともなく歩き出した。