その時、いつか私はこいつらに襲われるかも知れないと思った。
「なんか兄貴の知り合いがセックス好きらしくて。初めてがそいつとなのは嫌だったってだけ」
「へー」
ユウの探るような、強い色を隠した目に見据えられて少し全身の筋肉が強ばった。
「ま、そういうことにしといてやるよ」
「え、ちょ……! 別に嘘は付いて無いんだけど!?」
また立ち上がるユウの背中に言う。
ユウは机の上のコーヒーを持って戻ってくる。
「ちょ、何……ン!?」
そしてまた私の横に座ると同時に唇を重ねる。
チュッとリップ音を立てて触れるだけのキスをすると、またユウの目に捕まる。
「あんま強がんな、お前」
「……別に」
「はっ、可愛くないねー」
ニコニコと笑いながら私の頭をポンポンと軽く叩く。
「っ、悪いね。元からなんだよ」
「ははっ。あ、今の顔は可愛い」
「もうっ、放してよっ」
それからもユウは放してと言う私を無視してからかい続けた。
「お前そろそろ帰りな」
段々と太陽が低くなってきて、ユウが窓の外を見ながらそう言った。
「うん」と言うとユウが「送る」と後を着いて出てきた。
クリスマス翌日でも街は少しだけ前日の余韻を残している。
「うわー……もう用済みだから、ほら。これこんなに安い」
ユウは店先に並んだクリスマス仕様のお菓子詰め合わせを指す。
「……私は好きだよ、そういう用済みのお菓子」
「安いからだろ」
「あ、バレた?」
ユウは笑った。とても小さく。
――その顔が少し寂しそうだって言ったら、どんな顔をするだろうか。
ユウの横顔を眺めると、その奥の一番星が目に入った。
まだ星が出るには早すぎるその空で、たった一つ、孤高に輝くその光が瞬いたような気がした。