「……ねえ京一。京一が助けてくれたんでしょ? ユウから聞いたよ」



震えが収まると、さっきよりも楽に話すことが出来た。



「ユウ?」



ああ、京一は知らないんだっけ。
さっき京一はユウのことレイヤって呼んでたよね?



「えっと、レイヤ?」


「ああ。……いやまあ助けたってほどでもねえけどな」


「ありがとうね」



どう言おうか悩んでいた言葉は思ったよりもすんなり口から出てきた。



「っ、ごめんな」


「え、何で謝るの」


「優子に酷いこと言ったりやったりしてお前のこと傷付けてた」



彼は下を向いて言った。心なしか声も小さくなった気がした。

何よ、らしくないじゃん。



「ああー、確かに。結構傷付いた」


「うっ、本当ごめんな……」


「あはは、うそうそ。冗談だよ」


「はー、お前なあ……。……でもほんとごめん、結局お前のこと守れなかった」



そうか。あの集団――恐らく暴走族だろうが――と繋がりがあったのも、ガラの悪そうな人達とつるんでたのも、私のためだったんだね?

確かに傷付いたこともあったけど、でも最初に京一を傷付けたのは私だよね。ごめんね、あの時――あの人達とつるんでる所最初に見た時、疑っちゃってごめんね。勝手に壁作ってごめんね。私、京一のこと信じきれてなかった。



「ううん。私こそ、ごめん」


「え?」


「色々。ごめんね」



お互い、口下手過ぎて言いたいことの半分も言えてなかっただろう。

でもそれで良いのかも。私達らしい。
少し拗れてしまったけど、どこかが直されるだけで全部ほどけていくみたい。

今なら京一のこと、全部分かりそうな気がする。……ってそれは言い過ぎか。

でもね、分かるよ。なんとなくね。


私が笑うと、京一もまたあのクシャッとした笑顔を見せる。

それだけで十分だ。

私は京一の笑った顔が好きなんだ。もう険しい顔は見飽きたよ。またこうやって私に笑いかけてくれるだけで、それだけでいい。