約一時間前。


どんなに探し回ってもキャンパス内に京一の姿は無かった。



「チッ……どこにいんだよ……!」



キャンパスの外のカフェにも。

それから街を探し回って、ふとファミレスか目に入った。

まさかとは思ったがもうこの辺で若者が入りそうな店はここしかない。
荒い息でドアを押して店内を見渡すと、京一が――居た。
ノートを広げて一人で勉強しているようだ。



「いらっしゃいませー。お客様何名様です……」


「京一!!」


「お客様!?」



ズンズンと近付いていくと、流石の京一も驚いた顔でこちらを見上げた。



「な、何だよ」


「来い」


「は? 何言って……」


「良いから来い!!」



京一の腕を掴んで引っ張ると振りほどかれる。ま、予想はしてたが。



「ちょっと待てって」


「あ?」



またごねられんのかな……。めんどくせえ。



「金払わねえと」


「……あ、ああ。そうだな……」



何とも拍子抜けな返事に俺は横で彼が会計を終わらせるのを待つ。



「で? 何だよこんな所まで探しに来て!」



店を出ると京一は不機嫌そうに聞いてきた。



「レイが……」


「またその話かよ。もう良いだろ」


「聞けよ! レイが高田達弘にさらわれたんだよ!」


「知らねえよ! そんなのあいつの勝手だろうが!!」



京一はキレて帰ろうとする。

何で……!


――ガシッ


ほとんど無意識の内に京一の肩を掴んで居た。



「なんだ……」


「いい加減にしろよ。今回はマジでやべえぞ」


「はあ?」


「……裏で久遠組が動いてる」


「っ……!」



言った瞬間、京一の表情が固まるのが分かった。



「相手はヤクザだ。人身売買でも臓器売買でも売春でもなんでもする奴等だぞ!? そんなことされたらどうすんだよ!!」



京一は少し俯いて考え込んでいるようだった。



「おいっ!!」


「っ、場所! どこだよ!?」


「一番可能性あんのはここだ。中津一家の本拠地に一番近い廃墟ビル」


「チッ……遠いな」


「タクシー呼んであるから」


「……行くぞっ!」



そして俺達は二人でタクシーに飛び乗った。