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長い時間車で移動した。何分くらいだっただろうか。視界を遮られると他の感覚が妙に敏感になり時間の感覚も狂う。
体感では小一時間だったが、実際はどうか分からない。
次第に速度が落ち、右に旋回するのを感じると車は止まる。
「降りろ」
左側のドアが開けられ、外から声がする。達弘達のような幼さの残る声じゃない。確実に大人の声だ。
また別の組織か?
どうせここで逃げ出してももう周りを囲まれているんだろう――気配で感じる――から、大人しく従うしか無いな。
乱暴に扱われるかと思ったが、全く触れられもしない。ただ周りを360度囲まれているのはその圧を感じるから分かる。
「ここで待て」
部屋の中に入れられ、ソファーのような所に座らせられた。
最後に男の声がして、周りに人の気配を感じなくなる。
流石に怖い。何も見えないしここがどこかも分からない。何をされるのかも。誰がこんなことをしているのかも。
人間は視覚からの情報が約8割を占めていると言われているが、それが無くなると本当に心細くなる。
わずかな音や空気の振動にすら敏感に反応してしまう。
ほら、誰かが今隣に座った――。
「こんにちは」
綺麗な声。女の人だ。
そう思う間もなく視界が急に開けて、後ろで縛られていた腕が解放された。あまりの眩しさに目眩がする。
「あら、ごめんなさいね。眩しかった?」
「いえ……」
彼女が取ってくれたのだろう。
次第に目が慣れてきて、思ったよりも薄暗い場所で、座らせられたのは部屋に唯一置いてあるベッドの上だと気付く。
だが……この部屋は何か変だ。何もない。あるのは今私が座っているベッドだけ。壁も床も天井も、全て白く塗装されている。明かりはついていないが、窓から入るわずかな光を白い部屋が反射して、部屋の中の様子を把握出来るくらいには明るい。
そして、少しずつ目の前にいる人の顔が分かるようになってくる。
「橘優子ちゃん?」
「はい……」
彼女の美しさに、思わず息を飲んだ。
「初めまして。久遠碧弥美っていうの。よろしくね」
「っ……?」
“クオン”……? どこかで聞き覚えが……?
「あら、逃げないでよ? あなたは大切な“商品”なんだから」
「商品……?」

