「な、何か言ってよ!」
「え、何……あの優子が……そういうこと気にするなんて……!」
「嫌われるって何したんだよ? なんかやらかしたのか?」
「ってかそもそも誰に!?」
ちょ、そんな食い付く? 凄い前傾姿勢ですけど!
そう言われると急に恥ずかしくなってきた!
「や、やっぱ何でもな……」
そそくさと逃げようとするが、腕をしっかりとホールドされて動けない。
もう、余計な所で先回りすんな!
「そこまで言っといて逃げるなんて無しじゃん。教えてよ優子。あっ、前言ってた人?」
「は? 前?」
「言ってたじゃん、良い人居るって」
はて、何の事だろうと記憶を引っ張り出してようやく思い出す。
あのバレンタインの時の話か。
「いや一言も言ってないからね? あんたが勝手にそう受け取っただけでしょうが」
「で、何しちゃったの?」
「何したっていうか……騒いじゃって」
「騒いだ?」
どういうこと、と夏川が私を見る。
「うん……ってか、泣いた? 泣き喚いた?」
「えっ!? 泣いた!? 優子が!?」
「橘が!?」
「あー、引いたかな……どうしよ……」
あれから冷静になってみて、とんでもない醜態を晒したんじゃないかと一人で青ざめた。
それから彼に面倒臭い奴だと嫌われたらどうしようって急に不安になってきたのだった。
「そんなことくらいで引かないでしょー。ってか優子が乙女過ぎて私がキュン死しそう……」
「泣くってことは何か原因あったんだろ? 大丈夫か?」
「うっ……」
流石夏川、鋭いな。
真剣な瞳はどこかユウに似ているような気がして僅かに息を飲んだ。そしてそれから、私を真っ直ぐに見る誰かの視線なんて、もうずっと見ていないからそう思っただけかもしれないと思い直す。
「うん、まあね。たいしたことじゃ無かったから」