「この子と、お友達になりたいわ。連れてきてくれないかしら?」


「は、はい」


「ああ、それから。さっき言ってたけど、そんな楽しい物は使わないでね? ――楽しみは取っておくものでしょう?」



碧弥美の白くて細い指が達弘の肩に触れる。
同時に彼の肩が震えた。



「はいっ……」



フフッという笑いを口元で吸って、彼女はその場を去っていく。


歩く姿の指の先からさえ、目に見えない何か圧倒的なものが流れ出ているようだった。

少年達はその透明に当てられてしばらく動けないでいた。





「すげえ……あれが――の……」











「あ~どーしよ……」



始業式の日の放課後、私は思わず机に突っ伏した。



「何、どうしたの? 何かあった?」



新しい学年になって同じクラスになった美穂と夏川が私の顔を覗き込む。



「いや……」


「何々、気になるじゃん」


「教えろって、橘」



ほとんど音にならないくらい小さく言った筈なのに興味津々で聞いてくる美穂と夏川。

ああ、なんでこいつらと同じクラスになってしまったのだろう。

とは言っても、実はこれは偶然では無い。2年生から国公立大学志望組と私立大学志望組で分かれるのに加え、一クラス分選抜される。
美穂と夏川の学力なら恐らく選抜組だろうと予測はしていた。

私だって親しくしてくれる人がクラス内にいるのは嬉しい。

でも少し……周りの奴等の物珍しげな視線が鬱陶しい。



「……嫌われちゃったかな……って」


「……」


「……」



人がせっかく言ったというのに、何も言わない二人。