爪を彼の肌から離し、もう一度、今度はしっかりとユウの背中に腕を回した。
「……ユウ……ううっ……うぁぁ……はっ、はっ……」
それなのに、今度は。
――息が、上手く出来ない。
彼の匂いに安堵する前に、吸う息と吐く息のタイミングがどんどん合わなくなっていく。
息を吸う暇もなく涙が溢れてくる。
『もう、関係ないんだろ?』
また京一の声が聞こえた。
まるで麻薬だ。
もう忘れたいのに、思い出したくもないのに、勝手に再生される。
昨日聞いたかのように、色褪せない声。
『邪魔なんだよ』
「……うぁ……きょ……い、ち…………やだ……ひっ……ひっく……ゲホッ、ゲホッ……ゲホッ……」
「おい! 落ち着けっ」
ユウは一度緩めていた私を抱き締める腕に、再び力を込めた。そのまま背中を擦ってくれる。
「レイ、ちゃんと息吸え! 落ち着け。大丈夫だから」
「ユウ……ユウ……! やだっ……やだよユウ……ひっく……行かないでっ。側に、居て……ずっと側に居てっ……! お願い……」
私は、まるで迷子のように彼に夢中で縋った。
それから何時間、彼の腕の中に居たのだろう。いや、正確には今も彼の腕の中だ。
彼の匂いを感じながら再び目を閉じたのは、もう空が目を覚まし始めた頃だった。

