その日の夜は彼の腕の中で眠った。
家に帰りたくないと言うとユウが彼のマンションに連れていってくれたのだ。
泣いたからか、風呂に入るとすぐ眠くなってしまった。それなのに1人でベッドに入っているとまだ泣けてきて、結局ユウが風呂から出てくるまで寝付けなくて。
「レイ? 寝ちゃった?」
「……ん……ユウ……」
「……おいで」
彼は親指でそっと私の涙を拭うと、自身もベッドに入って私を抱き寄せた。
「寝れない?」
「……眠い。けど寝れない……」
「眠いなら大丈夫だ」
そして頭を撫でてくれる。その安心感と心地よさに、次第に眠気に支配されていった。
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「お兄ちゃーん!」
遠くに見える京一に向かって駆け出した。5歳上の京一は小学生五年生で、私は幼稚園が終わると彼の迎えを待っていた。
「優子! 遅くなってごめんな」
「ううん! あのね、今日ね、ヒロヤ君が――」
堰(せき)を切ったように話し出す私の横で、京一は安心する笑みを浮かべていたんだ。
私にとっての保護者は、親は、京一だった。
勿論、小さい頃は“私は”母も父も好きだった。ごく普通に子供が親に抱く感情を、その時の私はまだ正常に抱いていた。
「お母さん! ゆうこね、今日はお母さんの絵をかいてね――」
私の前で「あら、そうなの」と母親の表情を浮かべている彼女。
いつからだ。いつから私は――彼女と話すのが苦しくなってしまったんだろう。

