次の日、私は告別式と葬儀に参列した。
何度かどこかで見たような顔ばかりだった。
父親の顔も、久々に見た。
ただ、――京一の姿は無かった。
「酷いわねー、橘さんの奥さん」
「そうねえ。あんな……ねえ?」
「あっ、しー! 娘さんよ!」
全部聞こえてるっつうの。
まあそう言われるのも仕方ないことだ。――自業自得。
彼女の死に顔は穏やかだった。肌はボロボロで目も当てられない状態なのに、表情だけ取り繕われたようににこやか――きっと死後に無理矢理作られた顔なのだろうけど――で、鳥肌が立った。
母親は、後天性免疫不全症候群だった。
分かりやすく言おう。――AIDS(エイズ)だ。
死因は肺炎。AIDSと合併して発症した肺炎を拗らせて死んだらしい。
納得だ。母親は昔から体が弱かった。
AIDSになる前から、低気圧の度に体調を崩した。
AIDSになってからは特に。危篤の連絡が入るのはいつも曇ってきた頃だった。
逆に、今まで持ちこたえたのが奇跡のようなものなのだ。
ああ、思えば母親が死んだ日――ユウと花見に行った前日――は酷い雨だったような。
父親は、涙など溢さなかった。
人影が無くなった葬儀場の周りを、1人ゆっくりと歩く。
全て終わって、皆帰っていった。父親も。
京一は結局現れなかった。
そして丁度ベンチに腰を下ろした時、聞き慣れないコール音が響いた。
私は、珍しく名前も確認せずに通話に出る。
「はい」
『もしもし』
その声の持ち主はすぐに分かった。
「ユウ?」
『そうだよ』
「……どうしたの?」
『……大丈夫か?』
「……」
『……レイ?』
「ねえ、ユウ……」
『ん?』
「……っく……ユウ……会いたい……」
『分かった。すぐ行くから、待ってろ』
通話はすぐに切れた。

