「…………え?」
「もう、病院から葬儀場に運ばれてるって。諸々済んでて、今からお通夜だって」
「は!? 今から!?」
「……うん」
「え、は、急がねえと! どこだよ場所!?」
ユウは慌てて私の手を引く。
「……」
「おい!?」
肩を掴まれる。
「……行った方が、良いかな」
「え……?」
肩を掴む手から力が抜けていく。
「……行きたくねえのか?」
「……分かんない」
そう言うと、彼の手に少しだけまた力が戻った。
「行こう?」
「……」
「外で待っててやるから」
「でも、今からじゃ間に合わないかも」
「その時はその時だろ。取り敢えず急ご?」
私は、ユウの目を見た。
「……うん」
そう答えて、私達は駆け出した。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
着いたのは21時半過ぎだった。
家に帰って制服に着替え、そこから葬儀場に向かうとこの時間になってしまった。
「じゃ、行ってこい。ここで待ってるから」
ユウが背中を押してくれる。
「うん」
通夜は既に終わっていた。
「あの、橘薫(かおる)の……」
「ああ、それならもうお開きになりましたよ」
「そう、ですか……」
すれ違った人に尋ねるとそう言われた。
式場の人に明日の告別式と葬儀の日程を聞いて葬儀場を出た。
「レイ! どうだった?」
「終わってた」
「そっか……。ごめんな、無理に連れてきて」
「ううん。良いの、ありがと」
別にユウが謝ることじゃない。きっと、私1人でも同じ結果だった。
正直自分の感情なんて一番良く分からなかった。
最後に母親の顔を見たいのか、見たくないのか。彼女の死が悲しいのか、悲しくないのか。
――分からなかった。

