マジか。マジか!? まさかの最上階!? ええ?



流石に冗談でしょ。格好つけたいだけよね。そうよね。




1人ポカンとエレベーターの階数表示を眺めているとユウが呼ぶ。



「レイ? 何してんだよ? ほら入れよ」



「う、うん……」



残念ながら冗談ではなく本当に住んでいるらしい。慣れた手つきで鍵を開け、中に私を連れ込んだ。



「ねえ、いいのこんな出会ったばっかの高校生家に入れちゃって」


「あ? 別に……てかホテル代払うのめんどいし」


「あ、ああ」



まあ、確かに自宅より格下の部屋に金出したくないわな。



「じゃ、聞かせて」



そう言われて、私は録音音声をユウのスマホに送る。



『ねー、知り合いんとこ泊まってくるね』


『おう』



約1分のファイルが再生される。

内容よりも雑音の方が圧倒的に長い。



「おい、これ返事したか?」


「してるよ。よく聞いてみて」



もう一度再生すると、雑音の中の父親の声をユウは見つけたようだった。



『おう』



「これか? ちっせえー」



陶器の衝突音で掻き消されてしまいそうなほど脱力した小さな声を聞くために、ユウはスマホの音量を上げている。



「てか『泊まってくる』だけで分かんのかよ」


「分かるよ。てか私が言いがかりつけなきゃいい話じゃん」


「そうだけど。じゃはい、これ」



ユウが見せてくれたスマホの画面には検査結果――“異常無し”の文字が並んでいた。