さくらいろの剣士1

 「ねぇ、さくらのおばあちゃんって、さくらの実力知らなかったんでしょ?」
「そうだけど。」
今日の昼間、多くの強豪校の大将たちを次々と倒して、私もチームも13連勝を飾ったのだ。
2分以上続いた試合はなかった。
なのにこんなに疲れているのは、周りがハイテンションすぎるからだ。
 やっとホテルに着いたと思ったら、部員全員とLINE の交換。
休む暇がない。
「どうしていわなかったの?」
先鋒の愛海が聞いてくる。
「どうしてって聞かれても…。一緒に住んでなかったし、言う必要もなかったから。」
「なんで?」
副将の結奈も話に乗ってくる。
「そんなの知ったら驚くもん。」
それなのに…
「でもさ、今日の試合観て、初めて実力知っちゃったほうが驚くと思うけど…?」
次鋒のそらまで。
そらは同じクラスだから何度か話すけど、ほかはあんまり話さない。
今の海南中剣道部には、中2しかいない。
先輩も後輩もないので、気を遣うこともない。
おかげでどんどん質問攻めにされる。
それにしても、今日はひどかった。
 自分よりも20センチ以上大きな大将を相手に、舞うように試合をした。
ひどい時には30センチ以上も差があった。
それでも関係なく相手を仕留める私の姿を見て、唖然とするおばあちゃんが、遠くから見ていてもよくわかった。
休憩時間に、
「さくらちゃん、そんなに強かったの?」
と聞かれた。「別に。」と答えようとした私を遮って、男子が勝手に喋りだす。
「そうなんですよ~。こんなに小さいのに、全国2位の選手です。」
それを聞いて、さらに驚くおばあちゃん。
「全国2位!?それじゃあ、凌太くんと同じくらいってこと?」
これは否定したくなかった。
黙っていると、
「ごめん。何にも知らなかった。」
と謝られた。
「いや、私が言ってなかったから…。」
驚かせてしまったことに後悔した。
家に帰るというおばあちゃんを、凌太と2人で見送りに行ったとき、