このお祭りが終わったら、花日はあの鳥居をくぐって帰ってしまう。夢の世界から現実に。妖の世界から人間の世界に。それが花日の正しい道だ。

僕はギュッと花日の手を握る。花日も笑って握り返してくれた。そして、二人で夜空に咲き続ける花火を見上げる。夏の夜の花火は、切なくなるほど毎年綺麗なんだ。特に、花日への愛情を自覚した瞬間から。

夏祭りが終わるまで、この花火が終わるまで、この手をつないでいよう。今だけは花日の笑顔も、温もりも、全部僕のものだから。

隣を見れば、花日は夢中になって夜空を見上げている。それを見届けてから、僕はそっと目を閉じた。閉じた瞳から涙がこぼれ落ちる。

一夏の恋は、花日が僕と出会ってくれるたびに巡ってくる。