「そういえば、もうすぐ花火が上がる時間だよね?」

花日がそう言い、僕は時計を見た。あっという間に時間は過ぎていて、もう夏祭りの終わりを告げる花火の上がる時間が近づいていた。

「もう終わりか〜。寂しい」

花日はそう言って笑うけど、僕は泣きそうになるのを堪えていた。だって、このお祭りが終わればしばらく花日と会えないから。

「お兄ちゃん?」

黙ってしまった僕を、不思議そうな顔で花日が見つめる。僕は慌てて首を横に振り、「何でもないよ。ジュースとかを買って土手に行こうか」と言った。



妖の打ち上げる花火は人間には見えないし、音も聞こえない。あの鳥居をくぐらないと絶対に見えないんだ。

「花火、早く上がらないかな〜」

オレンジジュースを飲みながら、花日は今か今かと夜空に大輪が咲くのを待っている。僕はただその横顔を見つめていた。

花日、君はこれから大人になってそしていつかは儚く消えてしまうんだね。僕とは生きる時間が違いすぎるから。こんな切なくなるなら、最初から君と出会わなければよかったのかな。