私は雅暉さんのことが好きだから、雅暉さんの大切なものも大切にしたい。


 雅暉さんが大事にしている気持ちを、私が奪ってはいけない。


 たとえそれが私の幸せに繋がらなくても、雅暉さんの幸せの方を大事にしたい。
「・・・・・・・・・うん、わかった」


 そう言って雅暉さんはにっこり笑ってくれた。


 こんなことを言ってしまう私は馬鹿なのかもしれない。


 それでも、欲しいと思ってしまった。


 雅暉さんにもっと触れたい。


 そんなことをしたら余計に気持ちが強くなってしまうのかもしれない。


 でもどうせ叶わないのなら、思い出だけでも綺麗に残しておきたい。


 私の初めての失恋。


 人生で初めて好きになった人。

 
 初めて私をフった人。


 その日繋いだ雅暉さんの手の形も大きさもぬくもりも、私は忘れることはない。


 忘れない。