まだ知り合って日は浅いとは言え、いつも笑顔の陽十香。


 そんな陽十香の目の奥のさみしい色が見えてしまった。


「ご、ごめん!」


 どう声をかけたらいいのかわからなかった。


 それ以外に浮かぶ言葉はどれも違う気がして、苦しかった。


「私から聞いたし全然だよ。まあ、遠距離は無理じゃんって思ったよね、はは」


「そっかー・・・」


 陽十香は私の知らない感覚をたくさん知っているんだろうな。


 恋をする楽しさも、切なさも、別れのつらさも私は知らない。


「私、人を好きになったことないんだよね・・・」


 生まれてから18年間、静かに、目立たないことを意識して生きてきた私。


 一般的な学生の大半がしてきたであろう経験を全くしていない。