慶太「亜妃ちゃん、ご両親が居ないんだよね?」

「・・・はい。」

慶太「嫌なこと聞くかもしれないけど・・・死別かな?」

「いえ・・・」

そう言って今までのことを説明した。
母親は名前すら知らないこと。
捨てられてからは祖父に育てられたこと。
祖父と死別してからは一人で生きてきたことなど。

…父親のことは話せなかった。

慶太「病院が怖いのは何か理由がある?」

「えっ・・・?」

慶太「いや、恐がり方が少し異常というか・・・
そういう反応をする子は何か事情を
抱えていることが多いから。」

「・・・わかりません。ただまだ小さい時、
祖父が病院に連れて行ってくれたんですけど・・・。」

確かに・・・私はどうしてこんなに病院が怖いのか。

父親に何か言われてた気がするけど、
全く思い出せない。

それでも、父親に毛嫌いされたからといって、
ここまでなるのだろうか。

・・・なんとなくだけど、思い当たるところがあった。

そう、祖父が父親に診せようとして突き返された時、
その足で別の病院に連れて行ってくれたけど、
そこが問題だった。
まだ幼く、泣きわめく私を、病院の先生と看護師で
押さえつけられて処置された。

処置自体に時間もかかったし、暗かったから
おそらく時間外だったのだろう。

・・・今まで忘れていたけど、あのときの先生が
私を見る目は父親と同じ目をしていた。

まさに"うっとうしい"そんな感じの目だったと思う。