和弥「よしっ。やるか」

聴診器を首にかけ直し、採血台を持って近づいてくる。

逃げたいのに、身体が鉛のように重たくて動けない。

…注射はしないで、と思ってはいるのに。
何故か声には出せなかった…

必死で目で訴える。

しばらくの沈黙。

和弥「…ちょっとごめん。」

「えっ‼︎ちょっ…」

何をするの…と言う前に抱き上げられ、
ベッドに寝かせられる。

和弥「…身体、しんどいんだろ?寝とけ。
とりあえず聴診するぞ。」

そういうと、服を軽く持ち上げ聴診器を入れられる。

「…」

和弥「…おい、息止めんな。」



「…ゴホッ…ヒュー、ヒュー」

和弥「やっぱ喘鳴すごいな。」

「…喘鳴⁇」

和弥「咳したり、息する時にヒューヒューすること
あっただろ?あれ。…咳はどれくらい前から?」

「…もう覚えてない…です」

和弥「咳は、どういう時に咳が酷くなるとかあるか?」

しばらく考えて、思い当たる節をさがす。

「えっと…夜寝ようとすると咳で寝れなくなる時は、
あります…あとは走ったり…とか。」

意外と冷静に答えられている自分に驚く。

和弥「タバコは?」

「吸ってないです。」

和弥「アレルギーは?」

「ない…と思います」

和弥「子供の頃に喘息って言われた事は?」

…子供の頃。祖父が病院に連れて行こうと
してくれてたのはこれのせい?と思ったが…

「ない…です」

和弥「おそらく喘息だな。咳で苦しくなる事は…?」

「…あります。」

心当たりがありすぎて、消え入りそうな声しか出ない。