それでも病院や医者に対する恐怖心は抜けなくて
ぐっと固まったまま動かないでいる私に、

和弥「…世話のやける」

そう言って私の横に立ち、ブラウスの間から体温計を
入れると、横から肩を抱かれる様な形でホールド。

この状況…恥ずかしすぎる。
自分が病院にいる事すら忘れる。

Pipipi

体温計がなり、我に帰る。

それと同時に体温計は和弥さんによって
抜き取られた。

和弥「よくもまぁ。とりあえず熱を下げない
ことにはなぁ。…座ってるのキツくないか?
ベッド使うか⁇」

無言のまま首を振る

少し困り顔の和弥さん。

血圧や脈を測り終わると、

和弥「ちょっと脱水も出てるし、採血して、
水分入れるためにも点滴したほうがいいな。」

そういうと、どこかに電話かけ始める。

和弥「瀧です。急で悪いんだけど、
今すぐ採血セットとアセリオ*を診察室⑧に
お願いできます?」

…採血?点滴?じょ、冗談じゃない。
やばい、どうにかして逃げないと…

キョロキョロと、落ち着きをなくした私を横目に
カタカタとパソコンに打ち込む和弥さん。

本当に医者…なの?

どうしよう、早くこの場から立ち去らないと…

頭ではそう思うのに、熱のせいかボーッとして
頭が回らないし、身体も言うことをきかない。

そこにトレーを持った看護師さんが入ってくる。

思わず身体に力が入る。

看護師「急患でしたら、補助入りましょうか?」

和弥「あ、いや…とりあえず大丈夫。」
チラッとこっちを見て和弥さんがそう言うと、
看護師は出て行った。






*アセリオ:解熱鎮痛作用をもつ点滴剤