しばらく飲んでいると、
隣の席のおじさんがタバコを吸い始めた。

「うっ…ゴホッ。ゴホッ…ヒュー、ヒュー」

おっと、やばい…咳が。

例え整形外科医とはいえ1人は医者だ。
病院だの何だの言われたらたまったもんじゃない。

とりあえず、席を外そうと思い、お手洗いに立った。

…はぁ。今回の風邪はタチが悪くて困る。
咳が全然治らない。

呼吸を整え、しばらく時間を潰して
お手洗いから出ると和弥さんが立っていた。

和弥「…大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です。」

和弥「…ところで、こないだの埋め合わせ、
いつしてくれんの?」

ニヤリと笑う和弥さん。
うぅ…怖い

「えっ…じょ、冗談じゃ…なかったんですか…⁇」

和弥「さぁ…どうでしょう」

またニヤリと笑って席に戻って行った。

もう、何なのよ⁉︎…ムカつく。

ため息をつきつつも私も席に戻るしかなかった。

席に戻ると友里と正隆さんは居なかった。
ジャズを聴くため奥の方に行ったらしい。

う…余計気まずい。…どうしよう。

私まで席を立つわけにも行かないし仕方なく座る。

グラスが空になってるのをみて和弥さんが
「次、何飲む?」と聞いてくる。

どうしよう、お酒は高過ぎてもう飲めないよう…

「あの…ジンジャエールを」

1番安いソフトドリンクを言うと

和弥「え、もう酔った⁇」

「いえ、すみません…実は今日、
あまりお金を持ち合わせてなくて…」

和弥「ははっ、そんな事。気にすんな。
ここは俺らが持つから」

「でも…」

和弥「こういう時は、ありがとうって
素直に甘えるもんだろ?」

「…ありがとうございます。」

やだ…不覚にもキュンとしてしまった。

和弥「じゃ、何にする?ほら」

そう言ってメニューを渡してくれた。