「起立、礼」

「「ありがとうございました」」

現在の時刻は8:00。

設楽先生が来なかったので自分で新曲の合奏を進め、朝練を終えた。


(楽器吹きたかったなぁ)

幹部になってそう感じることが増えた。

部活の時間は変わらなくても、幹部会で話し合いをしてたり、様々な子にアドバイスをしてたりして、満足した練習時間をとることができない。
それに加え、今日のように合奏を自分でやることになると、練習時間がますます減ってしまう。

自分の楽器を準備室の中にしまい、ひな壇の片付けにとりかかる。

「はーい、仕事して~」

予鈴までに教室にいかなくてはならないのだが、その予鈴のなる時間は8:10。
1日のなかでもトップを争う忙しさだ。



あ、指揮台片付けてない。

ふと思い出し指揮台の方に向かうと、ゆうとけいが片付けを進めてくれていた。

「2人ともごめん!ありがとう!」

声をかける。

「学指揮おつかれさま。」

「予鈴に間に合わせないとね。」

流石、私を労いながら謙遜させないようにしてくる。一流の男どもだ。


そうこうしているうちに音楽室は吹奏楽部での隊形から授業の隊形になる。

8:08。急げば間に合う。


(そうだ、朝学習のときに朝練のことまとめとこ。)

「美玲、教室戻るよー?」

りんから声がかかる。

「すぐ行く!」

私はそう答え、新曲のスコアを引っ張り出した――




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キーンコーンカーンコーン

8:15。本鈴だ。

(はぁ、走ってはないけど動いた……)

なんとか朝学習の時間には間に合った。

さて、記憶の新しいうちに朝練を振り返らなくては。

私はファイルの中からA4の白紙をとりだし、今日やった新曲「平成ヒットメドレー」の練習ポイントを書き出した。


練習ポイントというか、どこのパートがいるか、どういうリズムの読み方をすればいいかというレベルである。

しばらく熱中していると。

「美玲」

後ろから声をかけられる。

この男はけい。番号順の席なので前後に座っている。

私語はよくないけど、まぁいいか。

「何?」

そういうと、私の前に紙が差し出された。

――なんだ、これは。

紙を開いて出てきたのはけいの字だ。

とりあえず読もう。


「パートリーダーへ
放課後パート練の時間に最上段で練習しよう。詳細はまた後で。
パートリーダーより」

どちらもパートリーダーだね。

………?

紙がもう2枚ある。

見よう。

「学指揮へ
部活の仕事やるのはいいけど程々にね。」

気持ちだけ受け取っておきます。

お、最後の1枚はなんだろう。

「美玲
もっと僕を頼っていいよ
彼より」

…そこは「けいより」じゃないのね。

そう心の中でツッコミながらも、顔が自然ににやけて行くのがわかる。

よし、紙は元通りにしよう。

手をかけた時、気づいた。

――なんか、書いてある?

美玲向けにかかれた紙の裏。

――なんだろう?

「愛する彼女へ
今日一緒に帰ろ
けい」

――えぇ!!!!!

うっそ!!

驚いて後ろのけいを見る。

もちろんだが学習に集中していた。


いくら手紙であろうとけいは学校でこんなことする人じゃないのに……!


「…美玲?」


隣の席の男子に話しかけられるまで、呆然としていた美玲だった――