さよなら、ありがとう、好きだよ。
今日は珍しく雪の降る日だった
一生〜‼︎
学校の帰り道、信号が青になるのを待っていた時だった
どこから僕を呼ぶ声が聞こえた高い声だ、女子の声だろうか、声のする方へと振り返ると
ゆかり?
信号の向かい側にいる彼女が大きく手を振って僕を呼んだ
ゆかりとは特別仲がいいわけではない、ごくたまに話す程度の仲だ
そんな彼女が僕になんの用だろうか?
告白でもないだろうし、いつも見たいな世間話だろう
何?
と僕は返した
あのね、私一生に伝えたいことがあるの、だからそこで待ってて
彼女は顔が赤かった、僕の見間違いだろうか、それともこの寒さのせいだろうか?
伝えたいこと?とはなんだろうかそう疑問に思いながら
うん、わかった
と言った
彼女はほっとしたような顔をしながら、青になった信号を渡った
この時だ、この時君と話さなきゃよかったんだ
そしたら君がこんな目に合わなくて済んだのに....
っ⁉︎僕は目を見開いた
彼女にトラックが突っ込もうとしていた
僕は精一杯の声を出して言った
危ないっ、ゆかりっ
でも僕の声だけじゃ届かなかった
声じゃなくて、足を出せば助けられたのかな?
いいや違う、彼女と出会わなければよかったんだ
そしたら....


ゆかり、あんなに元気だったのに.....
私、そんなゆかりが大好きだったな
原因は運転手の居眠り運転らしいぜ
まだしたいこともいっぱいあっただろうにね....
彼女の机には花が添えられていた
クラスメイトのみんなはゆかりが亡くなったことを悲しんでいた
女子なんかハンカチがびしょびしょになるくらい
男子はいつもみたいに騒がず、静かに下を向いていた
僕はどうすることもできなかった
ゆかりはクラスのみんなの人気者でそんな彼女とは正反対の僕とも話をしてくれる、明るくて元気な優しい子だった
なぁ、石川
隣の席の杉山が僕に話しかけてきた
お前、ゆかりが死んだの見たんだろどんなんだった?
....え⁉︎
ちょっと杉山っそんなこと聞かないでよ
女子が杉山を叱りつけていた
だってよ....
杉山はいいわけをするように言った
僕は杉山の言った言葉を思い出した
どうだったって.....
僕はあの時頭が真っ白になって、僕は...僕は...
本当杉山最っ低‼︎
あと、一生もなんか言い返しなさいよ
⁉︎僕はこの声を知っている
高い声、女子の声....
この声は....
僕は声のする方へと振り向いた
ゆかり?
よっ、一生
うわぁー
僕は驚きすぎて机から転けてしまった
その姿をニヤニヤと見ながら笑っているゆかりがいる
死んだはずのゆかりが
これは一体、どういうことなんだろう?え⁉︎ちょっ、ちょっとゆかり⁉︎
なんで⁉︎
僕は腰が抜けてしばらく立っていられなかった
杉山は僕を変な目で見ながらこう言った
石川、ゆかりはもういないんだぞ?
そんなことわかってる、わかってるけど
で、でも
僕はゆかりの方をチラリと見る
ゆかりはニヤニヤしながら
教室の中でひょこっと出てきた
その度に僕は
あ、ゆかりと声を出した
しまいにクラスメイトは僕が変なやつだと言い始めた
ゆかりが死んで変な妄想してるんだよとか、幻覚見えてるんじゃないとかそんなの僕だって思う
思うのに彼女は僕の目の前に現れる
どうやら、彼女は僕にしか見えていないらしい
ようやく立ち上がった僕はこれ以上変人だと思われないように、彼女を誰もいない廊下へと呼び出した
何?一生ナンパ?
彼女はからかうようにそう言った
違うしと少し照れながら僕は言った
彼女はニコニコ笑っていた
ゆかりはからかうのが好きだから
そんなことより本題の話を彼女に問いかけた
ゆかりはどうして幽霊になったんだ?
え⁉︎ゆかりは少し驚いていた
自分の体を見て半透明なことと、浮いてることを確認して
うん、なっちゃったね
って、嘘っぽい笑いをした
僕はその笑顔を見て、下を向くことしかできなかった
ゆかりはそんな僕を見て
いいのっ、一生は私のこと見えるんだから
?その意味が僕にはイマイチわからなかった
でも、自信満々にいう彼女に元気をもらった
それで、幽霊になったってことはさ未練があるってこと?
ゆかりがどうして幽霊になったのかなんてわからない、だからありがちな展開を思い出して聞いた
そもそも、ゆかりは幽霊なんかじゃなくて、自分の幻覚じゃないのだろうかとも思えてきたんだから
実際のところ夢を見ているようだった
ゆかりはしばらくして口を開いた
.....うん、そう私未練があるの‼︎
またまた自信満々にいう彼女を見てめんどくさそうと思ってしまった
彼女のことはきっとくだらないことだろう
いつも笑顔で友達にも家族にも愛されているんだから
へぇ〜、どんな未練なんだ?
興味なさそうに問いかけた
彼女は少し照れながら
私、彼氏がほしいの‼︎
へ⁉︎
デートして、手繋いで、キスして、キャァー
彼氏ほしい‼︎
.....ドンピシャだ
やっぱりくだらないことだ
だから一生、私と明日デートしよ‼︎
そんなのもちろん
ヤダ......めんどくさそう
⁉︎なんで、いいじゃん
彼女はほっぺたをふくらましながら怒っていた
僕じゃなくて違う人に頼めばいいじゃないか
彼女の方を僕はチラリと見た
彼女は僕を睨みながら
そもそも一生のせいなんだからね
一生があの場所にいなかったら私死んでなかったかもしれないし.....
僕は弱味を握られた見たいだった
彼女は
それで行くの?行かないの?
大きな声で問いかけた
僕は仕方ないと思いながら
....わかった、行くよ
と返事した
彼女はやったーと飛び上がっていた
暢気なやつめ、そもそもデートは好き同士がするものだろ、それに僕これ初デートだし
じゃあ、明日9時に三角公園集合ね
そう言って彼女は僕の前から立ち下がろうとしていた
え⁉︎ゆかり今日どこで過ごすんだ?
死んだんだから帰る場所はないだろうし
家族のところ、明日で最後になるんだから
だから一生、明日めいいっぱい楽しませてよ
彼女は笑顔で手を振った
僕も手を振り返した
僕は下ろした手を見ながら
そうか、明日で最後か
そう思って手を握った


お待たせ〜
遅いっ、10分遅刻
10分遅れて彼女がやってきた
ちぇ、いいじゃん10分ぐらい
じゃあまずどこに行きたい?
デートのことは色々調べてきた
相手に合わせるとか、タイミングを見て手を繋ぐとか
今日で最後ならゆかりに最高のデートをさせてあげたい
うーん、じゃあ映画みたいっ
私、無料で観れるし
自慢げに僕の方を見てきた
はいはい、いいですね無料(棒)
ちょっと、何よっその心のこもっていない返事は
そうですか(棒)
ほらっ
ねぇ、あの男の子見て
ずっと一人で喋ってる
えぇ〜気味悪い
.......

僕は彼女の方をチラリと見る
なんで黙ってるの?
私と喋ったら、気味悪がられるよ
彼女は下を向いて歩いていた
自分からデートするって言い出したくせに、余計なこと心配する
別にいいよ、今日はゆかりとデートしに来たんだし
ゆかりはようやく僕の方を見た
少し照れながら
じゃあ、デートといったら手繋ぎたい.....
手?
ゆかりは照れながらうなずいた
けどゆかり、手繋げないじゃん
透けるし
うん....やっぱりそうか....
まぁ行こっか映画
また嘘の笑顔だ
手をそんなに繋ぎたかったのかな?
僕は彼女の手を見つめながら、自分の手を彼女の手の近くにおいた
⁉︎なにしてるの?
手繋ぐ振りしてる
手、繋ぎたいんでしょ?
彼女は笑いながら
これ絶対意味ないでしょと言った
でも、手繋いでるみたいでいいね
笑顔で僕に言ってきた
見たことない笑顔だった
その笑顔に少し照れてしまった
僕はゆかりと初めてのデートをしてとっても楽しかった
生きてる頃は教室でたまに話す程度だった彼女がこうして目の前にいて話してくれる
でも、君はこのデートが終わるといなくなる.....
終わらしてはいけないような
なんだろう、この気持ちは
じゃあ次はなにしたい?
二人きりになりたい、それでこれは次じゃなくて最後になるよ
ゆかりはなにかを決心したような目をしていた
最後か....
僕は小さく呟いた
冬はすぐに暗くなるから時間が短く感じた
公園でいい?
うん
集合場所だった三角公園のベンチに座った
彼女は
最後は私の話を聞いてほしい
と言った
私、本当に死んじゃったんだなって今日思ったんだ
.....
ゆかりの話は本当に最後にするような話で僕は何も言えなかった
って何か言ってよ
ごめん、なんて言ったらいいかわかんなくてさ...
僕は下を向いた
ねぇ、一生
一生はさ、私が死んだ時どう思った?
どう思ったって......
あの時は胸をえぐられるような気持ちで、何もできない自分に後悔して、
けど今は......
あれ?ゆかりは生きてるんだっけ?
僕は涙を流した
理由なんかわからなかった
わかんないけど....
止まらなかった
ゆかりは死んだんだってそんなのわかってるけど、死んだんだから成仏しないといけないのはわかってるんだけど、僕はゆかりにずっとそばにいてほしいんだ
止まれ、止まれ
止まらないときっと彼女は泣きそうな顔をするから
止まれっ
.....死んじゃった、私はもういないってわかってたんだ
昨日さ、クラスのみんな私に涙流して、悲しんで
家族だって全員おかしなぐらい泣き叫んで
私はここにいるよ、まだいるんだよだから泣かないでって伝えられなくてさ
みんなの悲しんでる姿見たらさ私、本当にいないってわかったんだよね
でも一生にはこの思いが伝わるから
一生には私が消えるまで泣かないでほしかった
彼女は今にも泣きそうな目で僕を見ていた
僕はただ
ごめん....
としか言えなかった
ううん、違う
一生が涙流したら、私もう我慢できなくなる
私はどうして死ななきゃいけないの?
まだしたいこともあったのに....
一生に伝えたいこともあるのに....
僕に伝えたいこと?
ゆかりは一滴の涙を拭き取りながら
うん、一生に伝えたいことが私の未練なんだごめんね嘘ついて
⁉︎待って、じゃあゆかりは....
私、一生に前、伝えたいことあるって言ったでしょ.....
私ね..一生のね....
ダメだっ、ゆかりが僕に伝えたらゆかりは消えるんだろ
ゆかりは手を強く握る
うん、そうだね
じゃあ...
けどね、私は今言わないと後悔するから
⁉︎言わなくていいっ
私、一生と初めて会った時嫌な奴だと思ってた
ゆかりっ
私が話しかけたら、すっごく嫌そうな目で睨んできてさ
私のこと嫌いだと思って関わらないようにしていたら
ゆかり、もういいって
なんか一生のことばっかり目で追ってね
頑張ろうって話しかけたらね
ゆかりもういいって
僕は大声で彼女に伝えた
ゆかりは首を振った
もういい、体が消えかけてるから...
私の話で笑ってくれて、私のことで優しくしてくれて
ゆかり、もういいからっ
お願いだから、僕の前からいなくなるな
僕は大粒の涙を流した
彼女も涙がたくさん溢れていた
ゆかりは涙を手で拭き取りながら
そんな一生が好き
え....
私、一生とずっと一緒にいたかったけど....
一生にはこれからがあるんだから、私よりいい人と結婚して、幸せになるんだよ
....体が
ゆかりの体はもう消えかえていた
.....
ごめんね、一生
ありがとう、大好き
ゆかりは笑顔で僕にそう言った
ゆかりの体はほとんどが消えてなくなっていた
僕はゆかりのことを呼ぶしか出来なかった
もう呼んでも来ない彼女を
ゆかりっ、ゆかりっ消えるな、いなくならなるな
僕は泣き叫んだ
そしてゆかりは消えた、僕の前で、僕だって伝えたかった
好きだよ
僕もだよって
だからゆかり
さよなら、ありがとう、好きだよ。