「珍しいじゃありませんか」

自分から来ることはなかった仕事を持ってくるとある遊撃剣士の集う道場にいた。

「なんでも良いんだ」

「人助け以外は拒み続けてきた君が」

道着を腰までおろしたまま仲間の一人が隣に座った。

「なんでも良い、何て安請け合いすんな」

「頭がおかしくなりそうなんだ」

「なら、吉原にでも行くか」

「何をするんだ」

食い付く風馬の肩に手を回して「割りきった姐は良いぞ」とケタケタ笑った。

はぁ…。

溜め息をつく風馬を見ていたオサ・貞吉は腕を組んで首を振った。

「貞吉さん、風馬はいけますよ」

「今、彼に任せられる仕事はないよ」

「どうして」

「私の約束を守れていない。あ、罰すると言うわけではないんだ。人として普通のことだ。しかし、今の彼に任せられる仕事はないよ。」

納得がいかない、と新吉は彼を追いかけた。

「私の勉強不足をお許しください。彼を外す理由が分からないのです」

「恋をして乱れたままの彼は自分おろか仲間の命も護れないだろう。古来の隠密時代の中に活きたままではいけない。ゆくゆくは、廃れてしまうであろう時代の仕組みを巧く渡る組織を作らねば世の中が移り変わっていったとしても明るい場所で生きることが出来ない隠密のまま廃れていく。
私は世に生まれたものは掛け替えのない尊い命だと思える世の中になって欲しい。
そのためにもーー………」

貞吉は興奮してか身ぶり手降りで歩き回りながら話していたが肩を降ろしてソファーにかけた。

「貞吉さん、言葉が過ぎるかもしれませんが」

「わかってる。留学先で影響は多少受けたかもしれない。だが、安心して欲しい。私は思想は尊敬するが被れたわけではないんだ」