差し出す白湯に手をつけず、女は切り出した。

「美雪の母です、これは店の」

「女将さん…」

女中は少々顔をこわばらせていた。
女中が首をふるので女将は咳ばらいをして続けた。

「娘から聞きました。結婚は代々家のためです。私もそうでした。美雪も許嫁がおります。事情は私だけは存じております。お忘れください。」

女将さんは紫の布を差し出してきた来た。
自分は汚いも綺麗も金は金。
金は金以外も以上もない、と思っていたことに偽りはなかったと思う。
だが、どうしてもこの金は許せなかった。

「なんの真似か」

「足りないなら申し出ください」

「親なら事態を金で買うな。あの女がお前のような親と同じ血が流れていたかと思うと虫酸が走るわ。その金は自分らの私腹を肥やす足しにでも使え」

「何て身の程知らずな!」

痺れを切らしたように立ち上がる女中に女将さんは小声で「お玉」と止めた。

「身の程知らずとは何だ? 身分か。身なりか。俺の今の立場か。まぁ良い、私も暇そうに見えて仕事はある。親なら子どもの管理をしっかりすることだ。帰ってくれ」

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