月を見る美桜は美しかった。

「未来の女子はどんな風に殿方に接するのかしら」

ーー え…… ?





僕は引き戸に凭れたまま心臓が止まるかと思った。

「……え、それってーーなに?」

「聞こえてしまったの…ずっと、知ったことを口にしてはいけない気がして」


彼女は小さく、ごめんなさいと謝ってきた。

「いづれ終る人生ですもの。どんな人に恋をしてもばちは当たらないわ」

「…それが じぃーー京ノ介でいいの?」

「…言葉の嘘には慣れてる。本当よ? 京ノ介さんは違うと思った。あなたの生きる平成の世はどうやって恋をするのかしら。」

「普通に"好き"って告白してんじゃないの? 知らないけど」

告白とかされる、されないの前にできの良い兄貴の橋渡しばかりで自分は選ばれる対象にすらないと思っていた。

「好き…?」

「ふん」

考えてみれば自分と同い年だっけ。
…ふーん。
複雑怪奇。

「はしたない…とか、思われてるのかな。不安になるの」



さあ、何て無責任な返事をして逃げるように廊下を離れて彼の部屋を覗くと彼は窓際に背中を預けていた。

「大樹」

ちょっといい?


僕は京ノ介の返事を待たずに隣に並んだ。