竹城美桜(たけしろみお)は旅館の娘だったそうだ。経営が傾き、慣れない長屋生活と金遣いが抜けない父親と苦労を知らない母親は喧嘩の絶えない毎日で兄は家をとびたしてしまい、美桜は売られる寸前だったと以前 隆之介から聞いたと京ノ介から又聞きしていた。
「連れ戻さなきゃ!」
「もう、行った」
彼が顎で揺れる扉を指した。
「どうして意地悪を言うんだよ。分かっていて追い出したのかよ」
「あいつは自分を許そうとしない。ひとに心をひらかない。大事なもの、守りたいものができないと自分を大事に出来ない。俺はあいつに守りたいものを見つけて生きて欲しいんだよ」
ひとが大事にしたいと気づきやすいのは恋愛だろう、と彼は言った。
キィー……
キィー…………パタンッ………
観音堂の扉の隙間から冷たい風が入ってきている。
「どうしよう」
いたたまれずに家を飛び出したものの帰るところなんて自分にはないのに。
溜め息がもれた………。
「連れ戻さなきゃ!」
「もう、行った」
彼が顎で揺れる扉を指した。
「どうして意地悪を言うんだよ。分かっていて追い出したのかよ」
「あいつは自分を許そうとしない。ひとに心をひらかない。大事なもの、守りたいものができないと自分を大事に出来ない。俺はあいつに守りたいものを見つけて生きて欲しいんだよ」
ひとが大事にしたいと気づきやすいのは恋愛だろう、と彼は言った。
キィー……
キィー…………パタンッ………
観音堂の扉の隙間から冷たい風が入ってきている。
「どうしよう」
いたたまれずに家を飛び出したものの帰るところなんて自分にはないのに。
溜め息がもれた………。
