未来だろうが、過去だろうが、夢だろうが今に戻るまで楽しむしかないんだろうから。
「大樹」
「何?」
相変わらず、彼は溜め息をついてから僕にはものを言うのが日課になっている。
「敬語を使えと言ってるだろうが」
「何ですか」
「『お呼びですか』とか『如何されましたか』とかさ。もの知らないのかよ」
「えっと」
「もういいから、美桜を手伝ってこい。日も暮れんだから」
「はーい」
焦れったそうに隆之介はこちらへ人差し指をぐるぐる回しながら話すと足早に作業場の障子のなかに消えた。
気だるい声を返事に混ぜて僕は欠伸がでた。
「はーい」
何に疲れたと言うわけではないが肩をまわしながら行くと、物干し竿から洗濯物を外していく彼女の背中は夕焼け夜空と周りに溶け込んでいて綺麗だと素直に思った。
「ごめんなさい、今からつくるからね」
いつでも飯を探す雛鳥じゃないと不満に思いながら、ウンと微笑んで取り敢えず隣に立って適当に掴んだものを篭に入れた。
