絢斗の顔、とても真剣だった。


きっとお母様を安心させるために、いっぱい考えたんだろう。


その優しい気持ちには共感する。


だけど、やっぱり……何で私なの? って思うよ。


本当、わけが分からない……


絢斗からの有り得ない申し出に、まだ頭が混乱してる。


「あ、あの、気持ちは良くわかりました。お母様を安心させてあげたいって、優しくて素敵なことだと思います。だけど、あの……」


それ以上聞き出しにくくて、口ごもってしまった。


「何? 言って」


「あっ、でも……」


「構わないから、言って」


「あの、なぜ相手が私なんでしょうか? 彼女のフリだけだとしても、もっとお金持ちで美人な人がいいと思うんです。私みたいなお金持ちでもない、普通以下の見た目の地味な女じゃなくても……」


私は、必死に言葉を絞り出し疑問をぶつけた。


なのに、絢斗を見たらきょとんとしてる。


「一花? 君は、自分のことを普通以下の地味な女だと思ってるのか?」