それから、しばらく――


私達は仕事を精一杯頑張りながら、2人きりの同居生活を続けていった。


絢斗からは何か言われるわけじゃなく、この清い関係をいつまで続けていくのか、どういうモチベーションでいればいいのか……全然わからないままだった。


だからといって、そんな気持ちを確かめることもできなくて。


ホテルでは総支配人とコンシェルジュとして距離を置きながら接しているのに、マンションの部屋にいる時の絢斗はとても優しかった。


「髪、アップにしたんだな。とても良く似合うよ」


髪型を変えたら、すぐに気づいてそうやって褒めてくれる。


料理を作れば、


「本当に一花の料理は最高だ」


って、笑顔で全部食べてくれる。


「一花……夜景が綺麗だよ。見てごらん」


優しく肩を抱いて窓際に連れていってくれて、2人でキラキラ光る夜景を見たり。


自然にサラッと発する言葉や、絢斗の行動にいちいちドキドキして……


本当に、キュンキュンさせる天才かって思うくらいで。


素直に絢斗にのめり込みたい自分と、信じちゃダメだという自分との戦いが、毎日、激しく繰り広げられ……


こんな性格にかなり疲れる時もあるけど、でも、やっぱり……大好きな絢斗の側にいられて、私は本当に幸せなんだと思ってる。