「…伝えたところで」
彩が俺の事なんとも思ってなかったのは明白だし、昔のことも覚えていなかった。
むしろあのキスのせいで嫌われた可能性の方が高い。
学校に行っても避けられるだろうし、話を聞いてくれるとは思えない。
『誰にでもこんなことするんだ!最低!』
投げつけられたあの言葉が、ずっと脳裏に残っている。
彩にとって、俺は…そういう風に見られてるって事だよな。
誰にでも…
「もー、そんなに落ち込むなら最初からしなきゃいいのよ」
「…落ち込んでない」
「どっからどー見たって落ち込んでるわよ。仕事に支障が出るのはやめてよね」
「岸さん冷たい」
「やかましい。私はアンタのママじゃないの、甘やかさないわよ」
そう言って岸さんはテレビをつける。
…彩の連絡先を知ってるのに、どう連絡したらいいか分からない。
「…情けな、俺」
「そんなの知ってるわよ」
「うるさい」
彩のあの傷ついた顔が離れない。
手なんか出すつもり無かったのに、無意識に身体が動いていた。
岸さんの言う通り、台無しになってしまった。
