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「こっちまだペンキ足りないよー」
「この暗幕もう1組持ってきてー」
ザワザワと、学校の中は本格的に文化祭の準備が始まった。
「…ねぇ、彩。何かあったでしょ」
「…へ…」
「最近、ずっと表情死にすぎ。今も気抜けてたよ」
私と翔子はお化け屋敷の看板を作る係。
さっきからペンキ缶の中に筆を付け入れしている私をジトーッとした目で見てくる翔子。
まぁ、最近…柚月が学校を休んでるから顔合わせずにすんでるけど。
「…翔子、あのさ」
「うん、何?」
「知り合いの話、なんだけど…急に、その…男友達にキスされたら、それって遊びなのかな」
「…状況によるんじゃない?告白とかはされてないの?」
「うん…男の子の部屋に行って急に…」
「そりゃ、男の部屋に行ってるなら同意みたいなもんだよ。何も無い方が不自然」
何も無い方が不自然…
「そっ、か…」
「遊びかは分かんないけど、男は友達にでもキスとか出来るって言うしね」
淡々と言う翔子の言葉が頭の中でグルグルとまわる。
「気になるなら、本人に聞けばいいんじゃない?どういうつもりだったのーって」
「そう、だね……」
「って、知り合いに言ってみれば?」
「ハッ、そ、そう!そうだね!うん、言っとく!」
クスクスと笑う翔子に動揺が隠せない。
こりゃ、バレてるな…
…文化祭の1日だけ、柚月来るって言ってたけど…話せるかな。
「彩、そこ黒色で塗って」
「あ、はいはい」
