隣の席で青春くん


どうやって家まで帰ったか、あまり覚えていない。



バタンッ



「はぁ、はぁっ…」



目の前の鏡に映ったのは、衣服が乱れたままの私。



柚月…何であんなこと…


私の事、からかった…?



「…」



それとも、私の事…好き、とか?


…いや、それはないか。


柚月は芸能人だし、周りに可愛い子とか沢山いるのに私に振り向く意味が分からない。



だとしたら、気の迷い…とか?


あの場に居るのが私じゃなくても、同じことしたのかな…




「…まだバクバクいってる」



私が軽率に家なんか行ったから…?でも、今回が初めてじゃないし。



「〜はぁ…」



柚月が何を考えているのか、全然分からない。




『今メディアで話題の、yuzuさんでーす!』




ついていたテレビに、偶然柚月が出演している。




『凄いですねー、モデルとしても活躍し今度は声優もするそうじゃないですか』



周りの女の子からキャーキャーと黄色い視線が飛び交う。



…やっぱり、遠い存在だよね。



期待なんて、しない方が楽だし。


あれは気の迷いであって、きっと一時的なもの。ちょっとからかわれたんだ。



そう言い聞かせても、胸の鼓動は治まらなかった。